石蕗の家(改題しました)
そらの珊瑚

壊れてしまったレコード
もしくは
石のように固いバームクーヘン化した父
その口からは
絶えず呪詛がこぼれる
隣に住まう
父の兄上との確執が
幼い頃から
絵巻物のようにまた綴られる
もう何百回
聞かされたことか
そんな父が
疎ましく
哀れで
そして
滑稽だ
関節が
逆方向に曲がった指を
蒸しタオルで温めて
クリイムを塗りマッサージをする
爪を切る
ざらつく切り口にヤスリをかける
それでも
また肉体は爪を育てるし
心はにくしみを育て続けるのだろう
にくしみの花を咲かせたところで
誰にも愛でられないというのに

久しぶりの実家は
何ひとつ変わっていない
日陰の庭に
石蕗つわぶきが咲いていた
見慣れた風景の中で
お地蔵さん化しつつある
母には
高性能の耳栓を
渡して
帰途についたのだった


自由詩 石蕗の家(改題しました) Copyright そらの珊瑚 2012-04-07 15:25:12
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