病気がちのムリー
ピッピ

ムリーの病名精神病
学がないから自分でつけた
ムリーは黒目がちで夢見がち
素敵な王子様と心中したい
でもいつだって叶わない
ムリーの全てはむり

長女マリーは勉強家
次女ミリーはしっかりもの
四女メリーは甘えんぼ
五女モリーはおませさん
三女ムリーは口が悪い
そのくせ誰かを愛したい
鏡を見るのがだいきらい
だけど誰かに抱かれたい

バイオリンの擦れる音
波打つガソリンの立てる瘴気
大切なひとの優しいうらぎり
そういうものにムリーは
憧れて憧れて憧れて憧れて
憧れて憧れて憧れて憧れて
憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて憧れて

喉のむこうで吐瀉物の味をかすかに覚えたら
ムリーは死へと歩き出す
カッターで血を見るなんて
ナンセンスなことしないから
いつだって悪者になりたくて
いつだって世界を救いたくて
ムリーの黒目がちぢこもる
朝が来るのがこわいから

ムリーは一人で生きていく
言葉はまっぴらやくたたず
ムリーとかかわる人なんて
みんな幸せになればいい
すべては壁のむこうがわ
すべては壁のむこうがわ
我慢してまで生きたくない
我慢してまで死にたくない

デッド・ラインを歩いてる
自覚がないの分かってる
誰から見ても明らかで
誰から見ても他人事で
一回きりなの知ってても
ムリーの人生使い捨て


自由詩 病気がちのムリー Copyright ピッピ 2012-03-16 23:05:02
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