【 私にとって “ 絆 ” とは? 】
泡沫恋歌
今年の漢字は“ 絆 ” ってことで
世間ではスーパーのタイムサービスみたいに
絆 絆 絆 と 声高に叫ばれている
“ 絆 ” ラーメン “ 絆 ” メイクアップ
斎場では メモリアルセット “ 絆 ” とか
まるでオマケみたいに “ 絆 ” が貼り付いた
先日
お隣りの国へ旅行にいってきた友人から
お土産に海苔をたくさんもらった
スーパーでも売られているものだが
私は一度も買ったことがない
子どもは友人宅で食べて美味しいという
初めて
封を切ってその海苔を食べてみた
色はどちらかというとミドリっぽい
味付けした油でギラギラしている
透かしてみると隙間だらけだった
こんな海苔は食べたいとは思わない
私の脳内にインプットされた海苔は
真っ黒でパリッとして
さっと炙って 少し醤油に付けて
炊きたての白いご飯に箸で巻いて食べる
あれが海苔なのだ――
子どもの頃から慣れ親しんだ
味こそ 日本人の “ 絆 ” だと思うから
私の “ 絆 ” は海苔に集約されている
去年は日本に未曾有の震災が襲った
津波で多くの人命が失われて
その後は原発の事故だった
この大惨事に人々は打ちひしがれた
弱り目に祟り目とはこのことをいうか
死を予感した時に思うことは
家族や愛する人たちのことだろう
誰もが誰かと繋がって生きていることを悟った
あの時 日本人は “ 絆 ” を再確認したのだ
震災の後
わたしは募金を集める仕事をしていたが
同胞が苦しんでいたら
たとえ非力でも支援したいという人たちの
熱い気持ちがヒシヒシと伝わってきた
ほとんど快く募金に協力してくれた
嬉しかった! 本当に嬉しかった!
日本人には まだ “ 絆 ” があると確信した
もちろん “ 絆 ” も大事だけど
『 がんばろう! ニッポン 』
この言葉もまだ終わっていないのだ