ぬる湯
そらの珊瑚

家族が皆
湯を済ませ
私が入る時には
既に それらは力なく
先ほどまで
あんなに
意気揚々と
張り切っていたのに
すっかり
ぬる湯めいていた

湯の中の粒子は
もはや
血気盛んな 
ぶつかり合いで
精神をすり減らすこともなく
昼寝でもしているかのように
くつろぎあって
いいなあ
ぬる湯

それでも
私の体温よりかは
十二分温かいはずなのだが
体温で線を引いた 境界線が
ゆるゆると溶け出し
私と
ぬる湯は
いつのまにやら
しみじみと 睦みあっていた
胎児と羊水が
かつて そうしていたように
ああ
ぬるい世界に戻ってみたい

蛇腹の蓋が
おうい、まだかい 伸びちまうじゃねえか と
欠伸した




自由詩 ぬる湯 Copyright そらの珊瑚 2012-01-23 09:57:43
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