折り鶴
そらの珊瑚

昭和二十年八月六日午前八時十五分

ヒロシマは地獄と化した

おなかのなかで泳いでいた名もない 胎児
三輪車に乗って遊んでいた あやちゃん
竹の物干し竿に洗濯ものを広げていた 母さん
アルマイトの弁当箱を持って
路面電車に揺られていた 父さん
ランニング姿で学校へ走って行った いがぐり頭のかず君
元安川でつりをしていた 定吉さん
廣島駅で恋人の出征を見送っていた 松子さん

たくさんの
かけがえのない命が生きたまま焼かれた

たくさんの人が
願っても叶わなかった「今日」を
私は生きている

縁あって
私は今 広島の地に住んでいる
時々 こうして鶴を折りながら


自由詩 折り鶴 Copyright そらの珊瑚 2012-01-21 09:37:00
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