窓辺の風
faik

全く、窓辺の風よ
そうやあやあと声を張らず
少し黙っていられないのか

私の爪先ももちろんそうだが
なにより、カーテンが困っているよ
お前の冷やかな愛の歌が
彼女の心を惑わせているよ

彼女は生粋の箱入り娘
2DKの箱入り娘
ニトリの国の皇女様
世の外郭にいるようなお前が
関渉して良いお方ではない

知っているだろう 世の習いを
分かっているだろう 世の厳しさを

お前が一番 見てきたはずだろう
滅多に咲いた愛憎の上を
寒々と駆け抜けてきたお前なら
もう分かっているはずだろう
この世にロマンスなどないことを

いずれにせよお前と彼女に限って
ロミジュリ的展開は起こり得ない

なぜなら彼女にはとうの昔に
心に決めた人が居るのだ
霧ヶ峰とかいう古風な名だが
お前より遥かに暖かな愛を歌う
三菱財閥の御曹司が

だから、窓辺の風よ
アウトサイドの住人よ
ここは男らしく腹を決め
どこか遠くの街へ、行け
このやわらかな愛の巣に
お前の入る隙などない
その想いが誠なら
もう彼女を困らせてくれるな
もう彼女を揺らしてくれるな

私をこれ以上凍えさせてくれるな
私のつま先を凍らせてくれるな
いくらお前が悲しみにくれようと
季節はまだまだ冬なのだから


自由詩 窓辺の風 Copyright faik 2012-01-20 18:26:00
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