わたし
木屋 亞万


ひとりぼっちになったとき
おそれるべきはこどくではない

わたしだけ というひとりよがり
いつのまにやら
どつぼにはまる

わたしだけ つらい
わたしだけ さみしい
わたしだけ しんどい
わたしだけ くるしい

わたしだけ
どうして
なんで
わたしだけ

まちゆくひとは
つらいことなんてないようなかおで
たのしそうにあるいている
しあわせしかしらないように

てれびのむこうでは
わらったりこいをしたり
はしったりうたったり
いきいきしている

なのに
わたしはどうして
こんなにも


わたしだけ  なの?






そんなことはないのだ
きっと


へやにもどって
ひとりぼっちになったら
だれだって

つらいさびしいしんどいくるしい


おうさまのみみはろばのみみと
さけべるあなはないけれど
とくめいのいんたーねっとには
あふれんばかりの私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私私


ひとりぼっちのとき
ぬくもりがほしくなるのを
くうふくのようにはみたせない

だれだって
なきたくなるよるはある
いきぐるしいひるがある
きえてしまいたいあさもある
だれだって
だれだって

わたしだけが とおもうのはやめた
わたしなんか とおもうのも
わたしだって とおもうのも
ぜんぶやめた


こどくになれば
わたしをわたしとよぶひつようがない
ほかのだれともくらべようがない


わたしはわたしだけれど
たぶんわたしはわたしだけではない
わたしでないわたしがたくさんいて
そのどれもがわたしをわたしとよび
わたしとおなじようにわたしをわたししている

だから
じぶんのくらいめんを
そんなにだいじに
かかえこまなくてもいい
せおいこまなくていい

だれだって うんこする
だれだって へをこく
だれだって
きたない よわい くさい


まぼろしをほんとうのようにつたえるものを
たやすくしんじないほうがいいかもしれないね

そう
ひとりぼっちになったとき
おそれるべきはこどくではない

わたしはわたしをいちばんにしんようすべきで
わたしはわたしいがいのすべてをしろうとするべきなのだ

わたしだけ から
ぬけだすために
わたしではないわたしをしるひつようがある

そう
たぶん
あなたのような


自由詩 わたし Copyright 木屋 亞万 2012-01-18 23:31:51
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