心臓が止まると死ぬらしい
木屋 亞万

心臓が止まったら
私は死んでしまうらしい
動けと思わなくても動くけど
止まるなと思っても止まる時は止まる
私は心臓をコントロールできない

心臓は身体の核
過剰に動くと辛そうに血を送る
心臓が早くなると息が苦しくなる
疲れ果てて眠っているときも
さりげなく血を送る
起こさないように
忍び足で血を送る

心臓は感情の核
おどろくとドキンと跳ね上がる
慌てるとトクトクと早足に
恋すればドキドキと昂って
泣いているときは蒸発するほど熱い

心臓が止まったら
私は死んでしまうらしい
身体は動かなくなって
心は停止してしまう
心臓が最後の砦

私は心臓をコントロールできない
外側から壊さない限り
内側からはどうしようもない
だけど止めたい訳じゃない
ずっと止まらないでいてほしい
もう私にはどうしようもない

心臓は時限爆弾
いつ爆発するかわからない
心臓が止まれば
心も体も粉々に
もう元には戻らない

誰が心臓を私に与えたのか
誰が心臓を操っているのか
そう考えると
自分ではどうしようもない
巨大な力が恐ろしくなる
神を信じてもいいような気がする
親に感謝してもいいような気がする
脳や無意識を過剰に評価してもいい気がする
まだ人間がわからないことの中に
心臓の鍵が隠されているのだろうか

心臓が止まると死ぬらしい
いや私も人から聞いた話で
ほんとうかどうか
確かめようがないのだけれど
どうやらほんとうのことらしいんだ


自由詩 心臓が止まると死ぬらしい Copyright 木屋 亞万 2011-12-28 13:42:12
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