夜想する
メチターチェリ

振り切れている一本の針。呼吸し心拍を上げて次の打擲を待つ。時の経過は音や光の揺らぎで知れた。繰り返される規則的な動作を目をつむり、静かに受け入れていればいい。

地球の裏側にはキセツ、季節が浮かんでいた。はるか海原の地平線に沈む夕日やら月のおちくぼ。ぼやけた輪郭。星の数ほどの祈りから一つの夜を選びだす。その気になれば夜はどこまでも続いている。
熟れた果皮に夜気はほどよく心地いい。時どきガタガタ音がするのはふるえているわけじゃない。むしろ燃えるほど、表現は複雑になっていく。そういうのってやっぱり禊ぎに似ている。

水の中でも穢れはついてまわるから歩くのは辛い。足は重いし、あたりは暗い。魚しかいないので、話しかけても返事がない。蛸が柔軟なふりをする。深海をゆらゆらわたる脇をかすめてスミを吐く。
抜かれぬためにどうすればいいかというと機敏さが必要です。ヒレ持ちウロコ持ち骨を持たない。が、ふと気づくと海の仲間たち全員と似ていない。游ぐことは許されなかった。

そういう目。区切りのない幻想は地続きでつながっている。圧しつけるとどうせ海があふれるから、閉じていても同じだな。海も大地もなみだのように塩辛い。

ミルクを飲むとねむくなるんだ(安らかにねむろう)。喉がかわいた。って、器物に注がれているのは観念で。咽頭からつま先まで鉄でできている。飲み干すとなつかしい、わたしの味が広がった。


自由詩 夜想する Copyright メチターチェリ 2011-12-26 04:26:45
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