受身だけでは勝てないぜ
木屋 亞万

受身はつらいよ
君たちは指示を待っているだけだと言われるけれど
自分のしたいことなどできないほどに
外側から押しつけられた
やらなければならいことに晒されてきた

学校の宿題をしましょう
塾へ行きましょう
習い事をしましょう
スイミングバレエ
ピアノバイオリン
絵画教室英会話
きっと将来のためになるよ

子どもは好きなだけ遊べばいい
でも
校区から出てはダメだよ
この公園はボール遊びしちゃダメだ
このグラウンドはお金を払って予約しないとダメだよ
道路で遊ぶと車の邪魔だよ
池の周りで遊んではいけません
家でゲームばかりしていてはいけません
じゃあどこで何をすればいいの
自分で考えなさい
そんなこと

受身は辛いよ
やらなきゃならないことがいっぱいだ
親から
先生から
命令される頼まれる期待される
人生を踏み外さないように
危なくないように
囲われる守られる叱られる

みんなで仲良くしましょう
どうして仲良くできないの
どうして一緒に遊べないの
どうして先生の言うことが聞けないの
どうして場の空気が読めないの

受身
受身を覚えないと
大怪我をしてしまう
だから必死で覚えた
言われた通りに
期待された通りに
この身に受け止められるように

受身しか知らないもの同士の闘いは悲惨だ
みんな相手の出方を待って
ひたすら揉みあっている
誰も何もしかけていないのに
受身をとって
負けていく人を
幾度となく見てきた

受験戦争は
受身の戦争だ
与えられた試験をうまく受け止めるための試練だ
どのような問題が投げられても
受かる能力が求められる
問題へ対応する能力を高めるんだ

就職活動は
社会への落下だ
上手く受身を取って着地しないと
死んでしまうかもしれない
これから先の人生を
うまく歩いていけなくなるかもしれない
一世一代の大受身だ

自分から動かないとつらいね
人から与えられたものは
どうしても身体に合わない
そのときの気分にも合わない
既製品の服がどこか
身体に馴染まないように

受身でいることが
身体に染み付いているんだ
その苦しみをまるで
いまどき若者の苦悩のように
語っているけれど
全部自分のことなんだ

反抗期のない子ども
反抗に対する圧力を受けとめてしまった子ども
やさしさが自分を殺す方向へ使われてしまって
思いやりが自分をあとずさりさせていく

自分を探しなさい
自分らしさを出しなさい
そう言われたとき
ふり返った道の上に
自分がいなかった
私は今まで誰の人生を生きてきたのだろうと
そのとき思ったんだ

誰のせいでもないけど
私は今まで受身だったから
今日からは自分のやりたいように生きていくよ
それが我が侭だといわれようと
私はどんどん攻めていく
怪我を恐れていては
何事もきっと成し遂げられない

臭くても汗をかいて
辛くても歯を食いしばって
負けても足を止めないで
これは私の人生だから

いつかまた
後ろをふり返ったとき
今度はちゃんと私の道に
私が立っているように
走っていくって決めたんだ


自由詩 受身だけでは勝てないぜ Copyright 木屋 亞万 2011-12-18 18:03:04
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