町の朝
もっぷ

この町の再生を
オーガンジー越しに覗く
こんな曇天に
輝く町を視ているひともいると知った、朝

こちらでは
隣の鉄工場が
けなげに仕事を始めたことを聴くことができる
昨夜の消滅に
ひとつの消滅にまた
立ち会うことのなかった
曖昧な時間は遠のいてゆき、

生まれ変わった作業音を響かせて
あと九時間ほどは
工場は働き続けるだろう

通りがかると
青い白い燐粉のようなものを散らしながら
鉄材が加工されているのを
知ることはできるが
そこ、はそこ、で
ここ、ではないままに


朝は発った
わたしのまなざし越しの
再生ならば
ここ、に掴める

…ふいに町が愛しくなって
なみだがこぼれた

ここは故郷なんだ、と
うそを自分に告げてみた






***
草野春心氏作『炎』
http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=244732
への、オマージュとして書きました。
草野氏にはこころから感謝申し上げます。


自由詩 町の朝 Copyright もっぷ 2011-12-08 10:15:16
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