大きすぎる朝

HBの鉛筆が発する甘い匂いに誘われて
細い線が集まり大きな夜を作り始める

ラッピングされた携帯電話から漏れ出しているのは
長い長い休み時間の喧騒
大人と子供と
そのどちらでもない者の声が聞こえる

記憶のような濃度の室内で
黒板は真っ白に塗りつぶされていた
途方にくれながらも
気丈に黒のチョークを探す教師達の影
それがなんだか笑えて仕方ない

からかうように次々と手が挙がる気配に
答えを知りながら俯いたままの「あの頃」
机の中に隠した言葉が
徐々に腐り始めているのに
気づかないふりをしている


やがて夜がほどけ始め
黙ったままの窓をすり抜けるようにして
無味乾燥な光が集まり小さな部屋を照らし始めた

遠くで着信音が鳴り響く
誰も出ない
出ることができない
着信音
鳴り続ける
誰か 
誰か
誰も
出ない


大きすぎる朝は
既に出来上がっている




自由詩 大きすぎる朝 Copyright  2011-11-26 01:57:54
notebook Home 戻る  過去 未来