花蝶陽月
たちばなまこと

台詞が浸透する
蝶じゃなくて花なんだ
月じゃなくて太陽なんだ
生活に懐かしい呼吸が舞う

遠くから見守っていた蝶が
夜のとばりのつぼみにとまる
戯れながら休息を得たなら
朝日を浴び 光をまとい
白い月をひらく

太陽から見る月はいつも満ちて
丸さに水をたたえている
左胸のクレーターを幾度も撫でる
望まない戦に傷を負った
肌に 金を継ぎたい

新しい月 もっとも近づく ともしび
予告が満ちる三日月には
あつくなった素肌を見せて
くらやみに輪郭をなぞる
かたく引きよせ合う くるしく
深くいかりを沈め
ながい月日の思い出が降る
なまえが降る
互いを静かに照らす
瞳の星がまたたき さえずる うた
ささやきと くぐもる呼吸とを つなぐ言葉の入り口が
終わらない文のやりとりを呼ぶ

はじめて向かいあった冬
月から詩を受け取った
「とても、すてきだね」と告げた
その鈍い痛みに気付けない程に
深く痛みを抱えていた頃
思えば蝶は舞っていた
いま つながる
色を得た空
永遠の海 自由におよいでゆけ

明けの三日月には
もっと やわらかく継ぐだろう
金色を
花、太陽、から 蝶、月のもとへ
蜜と光
おしみなく







自由詩 花蝶陽月 Copyright たちばなまこと 2011-11-11 14:10:40
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