生まれたことについて
たちばなまこと

きみのペースに生きている
ゆるまったり急いたりして
かたちを自在に変えながら
音楽を奏でるいきもの
春の空をゆびで容易くひろげて
降りてきたきみなのでしょう
川辺の花に鼻をよせ
草にむしゃぶりつくいもむしを手に招き
かわいいんだよと歯を見せる肩越し
雲は風のきまぐれに流れ
空気はたいようの生活についてゆく

わたしには
同じ顔をした母と
同じ哲学を持つ父と
妹と
弟がふたり
きみには
美しい母と
司祭のような父と
妹と
弟がひとり
わたしに壊れている部分があるとしたら父の不在と台頭
きみが渇望している母の存在

受け入れた 受け入れられた
生まれたことについておもう
手が似ているね
小指が短いの
生まれたことについて語り合う
空白を埋めて
かけ算で高まるように
ああ
生まれたのだから
朝が晴れればさんぽに出るし
雨の日はぬくもりをたくわえる
確かに存在する真昼や
確かに存在する脈拍
豊潤からごはんをいただいて
夜はおさない声を床にならべる
生まれたことについて 手を合わせて
生まれることについて 寄り添うことを求め
生まれることについて 曖昧なひとつの道を見つけ
生まれることについて 終わらない交換をつづけ
ひたむきなたましいの独白を
こぼさないようにすくいたい
ああ
ばかげているのかな

きみのペースに生きている
八割の遊泳と二割の閃光
からだじゅうをなめまわす瞳の
最中さなかに生きると決めた
春の空を食べてみたかったから
降りてきたわたしなのでしょう
素材の声に耳をよせ
虹の糸をつむぐ
生まれたことについての潮騒
生まれることについての極彩
とおくひろがる思想に透けて
雲は風のきまぐれに流れ
空気はたいようの生活についてゆく
雲は風のきまぐれに流れ
空気はたいようの生活についてゆく








自由詩 生まれたことについて Copyright たちばなまこと 2011-11-30 15:56:45
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