どうか今夜ははじめて交わした色を思い出して、手をつないで眠ろうよ
たちばなまこと

例えばあやつることしか知らない 悲しい涙に語りかける

どうして?
あなたの 「もの」 ではないってわからないの?
本当とはそんなんじゃない
痛みから逃げてばかりで
次から次へと求めるような
安易なものじゃない
失ってから気付くあなた
失っても尚 気付かないあなた
愛された記憶が無いから 愛し方を知らないと嘆く前に
激しく 滑稽に 求めることからはじめれば
いいのに!



例えばこの先に見える 美しい季節に語りかける

どうして?
どうして 忘れてしまうのかしら
実りを見てごらん
あなたの両手にあふれる
あたたかい果実は
春の予感をはらんで
あなたに微笑みかけている

どこへもゆかないで
離れないで
灰になるときも一緒だよ
いくつもの夜
くるおしく願い 眠る日々があったのでしょう?
どうして 確かめ合うことを忘れてしまうの?
あきらめてしまうの?
わきおこる緋色を
理性にまかせて
奥へ 奥へと閉じ込めてしまうなんて
おかしいよ
明日 亡くしてしまったらどうするの?
思い出に 肌は触れられないんだよ



今日 私は
母の生き方を正しくなぞる
教えられた訳ではなく
母から受け継いだ記憶が からだに降らせる 慈雨
慈雨だよ

どうか今夜は
はじめて交わした色を思い出して
手をつないで
眠ろうよ


自由詩 どうか今夜ははじめて交わした色を思い出して、手をつないで眠ろうよ Copyright たちばなまこと 2011-11-03 09:50:47
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