たとえばレモンのなかでよみがえるならば
アラガイs


生きているのが不思議なくらい夢のなかに暮らしている
きみとぼくの距離がどれくらい離れているのかさえわからない
林道のわき道を行ったり来たりしながらも誰かに追いかけられている影はみえない
帰らなければならないのだろうと必死になって走っているぼくの背中は小さく
木陰を通り抜けても
木漏れ陽を浴びても
曲がりくねった峡谷のなかで息を弾ませている
登りもなければ下り坂もない鬱蒼と茂った道
「突然足を止めた 。」どこまでも青い窪み 「風はとても甘酸っぱい草むらの匂いがして」

場面が切り替わるのは微妙なそれからだ
懐かしい色の顔がたくさん浮かんでは消える
汗ばむ指先で誰かれともなく名前を呼んだ

「先生、みきちゃん、可奈穂」「おかあちゃん、ぼく、まだ干乾しレンガを積み上げたまま…」
忘れようとしては思い出す悪戯な黄色の
そう、応えはいつも眠りのなかでしか現れてはこないのだから 。









自由詩 たとえばレモンのなかでよみがえるならば Copyright アラガイs 2011-11-01 06:19:17
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