ブルーライン
伊月りさ

ボックス席のような芝生に
投げ出された四本の裸足
滑って行く

青い単線
わたしたちを吸い込む
白い山々
爆破寸前の
たっぷりとした夏

見上げた
網棚の
麦わら帽子のなかは宇宙につながっている
散りばめられたのは
ふりきられた人々の戸惑いか
漏れてくる光は
とりのこされた人々の眼差しか

どこかの轟音を忘れないように
願いのように
線路は百キロを震わせ続け
わたしの内臓が揺れる
どこまで行くんだい、と
聞こえない、
ふりをして
まぶたの裏でくり返す
再会と
終着

そして
黒い山々
小さな宇宙に蓋をする
大容量の夜のとばり
この背中に
太古の恐怖がのりづけされるのを見た
見える、
見るものを求めているのだ

きっとそうだったのだろう、
あの渓谷の人々も
みずからを誤らないように
あやかしを求めて
倍増する居場所に
つながっていられるように
言葉を尽くしてきたに違いない

溶け込めない
わたしを
並走する川はながめている
未来ごと
押し流すには
くるぶしまでで充分だとわらって

きみが
異国なのだと気づいたら
もう、そこは旅の終わり
弾けた残骸が
紅葉になったら また
いだかれようという約束は走る
何度でも待ち合わせて
待ち合わせて


自由詩 ブルーライン Copyright 伊月りさ 2011-10-06 14:04:39
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旅と鉄道(仮)