あさぐも
伊月りさ

朝蜘蛛を野放しにして数日
白い壁に
夜を引きずり出そうと
穴は這う
エアコンの吹き出し口を好む
わたしの目がかわく

土壁に
みつけた、と呟いた午後には
あなた つぶされてしまった
父は子宮の守り方を知らず
母は絞首台への道を譲る
その眠りのように
連綿と たしかに途切れた音がした

たしかな音
さえずりならば まるい腹部
靴底ならば たんぱく質のにおい
世界中が チョークをのんでいる
かもしれない、と
鍵穴をふさぐ女になれ 

増殖だけ
なげうっているものを つぶした
この目
のように 頭上で這っているのは あなた
縁起に迷ってはいけない、
糸の先にはわたししかいない


自由詩 あさぐも Copyright 伊月りさ 2011-09-24 16:36:42
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