しろい流転
あぐり



地下鉄のアナウンスを
白い波のようにやりすごして立つラインのうえ
共通語の素質なんて、
たぶん欠片もない言語でわたしたち
今もまじろうとしている


(かじりもせずに
舌先を触れさせただけで林檎だと言えてしまうの
Wikipediaのつながりで
あなたのこと、知りました)


何が正しいかなんてよく考えるのだけれど
何にただしくあってほしいのかって
それでしか生きていけない気がする
殖え続けていくやさしさの
いちばんまだ
薄くてやらかいものの皮膜に
爪をたててこまやかな傷をつくる
ちいさなものになって肌を重ねたなら
わたしもやさしさにかわっていけるんだろうか


分裂がたりないよって
ずっと言われて
何にただしくあってほしいかって
まだ決められないわたしも
今だってまじろうとしている
わたしたちを浸している温んだ水のゆれ
指先からわたしも
やさしさになっていくんだろうか
やさしくあってほしいと思うからわたしも
やさしさになっていくんだろうか






自由詩 しろい流転 Copyright あぐり 2011-08-20 23:03:01
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