エストエム
伊月りさ

かげに入ると消えるよ
あまい香りなびくよ
そして、山をのぼろう

低い木立続くよ
かくれんぼは負けだよ
蜂は蜜をみつける

 肩に落雷
 肩に落雷
 ころされそうな扉をひらけ
 わたしをニヤリなめらかにした
 体中の栓、圧し跳ばせ

 「痛い」って合図
 斜面がぶくぶくと流れて
 下の屋根が見えなくなって
 そのへんに隠れていた小さい動物が必死に叫び返してきた
 うれしかった
 わたしは
 蜜を与えられないことを知っていたけれど

だれかに届いてしまう言葉なんて無能だ、と
きみがあまりに笑っているから
ひきずりだしたかったのかもしれない

肩に突き立てるよ
いくつでも構わない
全員とびだしておいで

まだ木立続くよ
蜂は当分絶滅しない
ここにいるよ


自由詩 エストエム Copyright 伊月りさ 2011-08-01 00:12:46
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