雑草
伊月りさ

庭のつばきのあしもとに
ちろちろ光る晴れ色を
わたしたち 雑草なんて呼んで
きみに叱られてしまった

雨上がりでもないのに
つまむだけですんぽと抜けて
糸くずみたいな根っこ
かわいいねぇ、とそれぞれをかかげて
どっちがいい?
こっちはすっごく大きいよ、
こっちは小さくてかわいいよ、
名前なんて知らない

ああ きみは毎日どんなにか
心を痛めているだろう

砂地を走り回り 山を駆け下り
汗ばんだ手の中ではしなびている
 土に戻さなければ死んじゃうよ、
いつからそんな切実に死を遠ざけられるようになる
 土に戻したって死んじゃうよ、
ともだちが言う
わたしたちは言わない
わたしはきみをばかにしていると言われるかもしれない

ビニール袋が曇るのは
息をしているからだとなんとなくわかっていて
それでもいつか 放りなさい、と言われて

暗く流れる順列を
わたしたちは教えている
ああ きみは名前なんて知らない
知らないままでいいなんて誰も言わない


自由詩 雑草 Copyright 伊月りさ 2011-07-31 23:14:50
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