野良猫その2
……とある蛙

ひょいと見ると出窓の内側で
そいつはいつものように
出窓に置いてある
真空管式の古いラジオに
じっと耳を傾ける
ビクターの犬のようだが
そいつは黒猫だ

出窓からは朝の港町の風景が広がり
開け放った窓からは
潮風と鮮魚と干物の交ざった匂いが
ゆっくりと吹き込む
その部屋の主人は
七枚重ねのスカートを履いたマリア
陽気な彼女は踊るように洗濯物を干す
もちろん亭主は漁師だ

しばらく出窓で微睡んでいた黒猫は
ひょいと窓からカンテラに飛び降り
そのまま港の繋留索のつながれたビットの上で
蜷局を巻いた。
鴉は猫を襲わない。
猫は鴉を無視する
微妙な無関係が港町を支配する。
どこの町も一緒の気怠さ


自由詩 野良猫その2 Copyright ……とある蛙 2011-07-19 12:47:34
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