停電の夜に
木屋 亞万

日が暮れる前に家に帰ろう
森の中で夜を迎えてしまったら
僕らはもう家をみつけられない
だれかここまで探しに来て
一滴の灯りを携えながら

気味が悪いほど空に
星が散らばっている
人間の生み出した夜景より
恐いぐらい迫力があるのに
その瞬きを彼らは見えなくしていたのだ

僕の肩に君が頭をのせている
君の髪がかすかに汗に濡れている
夏の夜は暗いほうが涼しい
どこかに花が咲いている気配があるけれど
今は君の刺激に隠れて何もわからない

僕は君とお腹いっぱいご飯を食べたい
僕は君と一緒にぐっすり眠りたい
僕は君をむちゃくちゃにしてしまいたい
僕は君に激しく熱く愛されたい
君より先に僕は今すぐにでも死んでしまいたい

君にさわるとざわざわする
君にさわられるとぞくぞくする
暗くて何も見えないけれど
明るくてもどうせ何もわからない

僕らにはそもそも
電気を消すという
選択肢が無い

夜が電気に照らされて
明るくなっていたせいで
明らめていたことを
ぜひとも一緒に始めよう

暗闇で
汗をにじませ
涙をながす

停電の夜に
僕らを止めるものは
朝が焼けるまで
何もない


自由詩 停電の夜に Copyright 木屋 亞万 2011-07-09 16:42:11
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