ばけもの
あおば

                110627




化け物といわれた男
おとこなのに乙子と呼ばれるのは大嫌い
蒲柳の質で
ウィルス感染を恐れ
人混みを忌避した
老いて
関節リュウマチになったが
人混みを恐れ
塗り薬で誤魔化しているうちに
痛みに耐えきれず
医師の元へと
蹌踉と街に出たが
帰宅途中の
愉快な集団に追いつかれ
文字通り立ち往生した
ウィルス感染を恐れ
自ら呼吸を止めたのだと噂されたが
リラックスするために噛んでいたチュウインガムを誤飲して
呼吸不全になったのだという
そんなこともあるのかと信じたが
事実は全くの冗談で
からかわれたのだと知る
この世には
化け物がいないのだから
端からそんなおとこも存在していなかったのだと笑われた
懸命にメモを取って損したと文句をいったら
要請したわけではありませんよと
目が厳しくなる
声が厳しくなり、口が裂ける前に慌てて退散した
これだから世間は怖い


自由詩 ばけもの Copyright あおば 2011-06-27 20:57:23
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