月夜
……とある蛙

歩いている。
あてもなく歩いている。
すっからかんの着のみ着のままで
歩いている。

足下には星屑が輝き
頭上には異様に大きな月が
幾つものクレーターを見せて
垂れ下がっている。

行き着く先は見えないが
前方山肌は黒く 黒い丘に
一本の灌木と枯れ枝の塊
数羽の梟が
ホウホウとこちらを向いて鳴いている。
ほうほう ホウホウ ほうほうと

頭上垂れ下がる月に向かって
歓声を上げる数人の発狂者
彼らは隊列を乱すこと無く整然と歩いているが、
口々におのれの運命と頭上の月を呪っている。

自分も叫びたいのだが言葉にならず
唸っている唸っている
もう唸り声しか上げられず
しゃれた言葉は霧散した。

今夜も梟の鳴き声ばかりが
叫び声にかき消されること響く

響く


自由詩 月夜 Copyright ……とある蛙 2011-06-27 12:37:30
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