長元坊
……とある蛙

山奥の名所旧跡の傍ら
誇りを失ったゲージの中の鳶
胡乱な眼で見物人を眺める
その眷属と同じ記憶を追いながら



丘を越えて吹いてくるそよ風
丘を覆い尽くした向日葵は
風にそよいで小首を傾げ
顔を撫でるそよ風に
いくらかの微笑みを見せ

丘の下遙か荒れ地
荒野 耕作を放棄した荒れ地
人の足跡は 畦に残る道と
土地の区画を示す菜の花
群生する向日葵は
この荒れ地を見下ろす丘の上

ヒデリ日照りひでり

陽光は先鋭に
鳥の陰を荒れ地に写す
荒れ地の上空に浮遊する
猛禽類一羽
旋回するでも無く
微風の上空に浮遊する

眼で追えない
複雑で正確な羽ばたき
荒れ地に棲むネズミ一匹
尿(いばり)の痕跡は隠せず
紫外線を探査する猛禽類
猛然と降下するや
獲物を捕捉する。

令状を読み上げ
時刻確認 対象を確保!!

っと言ったとか言わないとか

誇り高き空の王者の
小さな眷属



自由詩 長元坊 Copyright ……とある蛙 2011-06-15 13:03:59
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