稀有な人々
salco

石粉と鉄屑で青い星を飾り立て
束の間の目撃者が自己存在証明を試みる
中でも稀有な人々は、歴史を彩るアクセサリー
人類という動物の思い出に花を添える

誰もが誰かと邂逅する為に生まれて来
誰もが稀人を待ちながら生き
思い出だけを携えて
何も残さず死んで行く

稀有な人々はまだしも手紙を置いて行く
あとはつまらぬ肖像の数々と
叶えられたためしのない遺言と
憧れを誘う空の下、苔むした墓碑銘と

それよりも、稀有な若者達はどこだろう?
戦場というケーキの上に飾り立てられた
潮風を瞳に映す無名の若者達は
その絶叫と血飛沫を吸わなかった地面は無いのに?

例えば陳腐な社や十字架が兵隊達の延命の代わり
赴いたのは母の為父の為、女人や子供達の為
死んだのは自由と制圧の為、正義と国益の為
だがお前達を忘れぬ者など一人もいない

老人達は曲がった指で拾い集めた枯れ葉を数え
濁った眼球に霞んだ夕日を映しながら死ぬ準備をする
赤ん坊達はもどかしく身をよじり泣きながら知って行く
薄青い眼球に映る世界が涙で洗われる事は決してないと

誰もが誰かと邂逅する為に生まれて来
誰もが稀人を待ちながら生き
思い出だけを携えて
何も残さず消えて行く


自由詩 稀有な人々 Copyright salco 2011-04-25 22:42:15
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