最初の海
itukamitaniji

最初の海

もう子供じみているわって 彼女は本棚の
漫画を全部取り出して 売り払ってしまった
山のように積まれた 思い出とロックのCDは
まるで宝箱を隠すみたいに 大事にしまった

何かを手放した 新しい両手で
今度は 何を掴めるのだろう

君の目にはもう 新しい最初の海が
映りこんで 何度も心を照らした


満開だった あの桜トンネルの桜は
昨日の雨で たくさん散ってしまった
切りすぎた髪が 可笑しくて笑った
優しい風が それをそっと梳(と)かした

悲しいけど 取り返しのつかないことって
たくさんあって 振り返ってしまうけど

消せない記憶の片隅で 夢見ていた
新しい景色 今度は嘘じゃなく旅に出る
悲しみも喜びも 一切を巻き込んで
君の物語は続く 波にもまれて 


もう目覚めてしまった 胸の中の怪物が
無邪気に蹴り飛ばしてる 心を内側から

君の目にはもう 新しい最初の海が
映りこんで 何度も心を照らした
悲しみも喜びも 一切を巻き込んで
君の物語よ続け まだ見ぬ空の下へ


自由詩 最初の海 Copyright itukamitaniji 2011-04-11 19:06:21
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