あたらしいいきもの
itukamitaniji

あたらしいいきもの

試験管からこぼれ落ちて
僕は生まれた
均衡のとれてた世界が
僕という形のいきもので歪んだ

鏡を覗いてみる
ふーん、これが僕なんだって
欲しがってた
羽もひれも何にもなくってさ

僕はきっと生まれた
何か役割があって
そう信じるようにって
最初は誰もがインプットされて


何がおかしくてか分からない
近くで誰かが笑ってて
それが最初に聴いた音だった
妙に懐かしかったんだ

僕はきっとね
どんな分厚い図鑑にだって
載っていない
そんな形をしているのさ

僕はきっと生まれた
まだ未完成なまま
遠い遠い宇宙の果てから
誰かの声に呼ばれて



あれ
何か変だ
胸の真ん中辺りが
とても温かい

そっか
君がくれたんだ
心って言うんでしょ?
君が居なくなって









僕は生まれた。


自由詩 あたらしいいきもの Copyright itukamitaniji 2011-04-25 22:08:58
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