アゲハ
itukamitaniji

アゲハ

教室の真っ白な壁に 君は油性ペンで大きく
大好きだった ロックバンドの名前を書いた
無茶なことしたなって 僕ら笑ったんだ
次の日になって また白く塗り重ねられてたけど

君や僕の心はずっと
ぐちゃぐちゃな落書きのままだったんだ

ノートの片隅の物語は 結末を忘れられて
僕の手を離れて 勝手に動き始めたんだ
挟んで忘れたままの 君が書いた僕の似顔絵は
変わらずあの頃のまま 下手くそに微笑んでいた

僕ら歩んできた物語は今 薄っぺらな紙切れ一枚で
小さくまとめられてしまった 何も知りもしないくせに
全て終わったんだよって 誰かが呟いたけど
いやそれは違うよ ここははじまりの場所なんだよ


このままさぼろうぜって 付き合って休んだ一時限目
悪ぶる君を 少しだけ羨ましく思ったんだ
君の右耳に開けられた ピアスの穴の向こう側の未来
もうすぐそこへ辿り着いて こっち側は見えなくなるよ

それでも無邪気な笑顔は
ずっと変わらないでいてほしいって思うんだ

放課後坂の上の公園に集合な 先生達にはばれないように
星空の下で みんなで輪になって話したこと
誰の夢が 一番綺麗なのか競い合った
たくさんの流れ星に 気が付かないまま

そんないくつもの記憶を 丁寧に紡いでいって
大きな翅にしたんだ 最後のチャイムが響き渡って
僕らきっと飛んでゆく 誰もがもう空を見ていて
繋いでいた手を ゆっくりと解きはじめていた


自由詩 アゲハ Copyright itukamitaniji 2011-03-25 00:09:12
notebook Home 戻る  過去 未来