ユニコーン
うめぜき


ユニコーンが咆哮するので
必死になってお腹を押さえる
すると君は
まるで星空を抱えているみたいだと笑う
お母さんが歌ってくれた
ある日の子守唄ばかりが耳元で風化していく
耳を開いてしまったせいか
君のけたたましい笑い声が
時々歌声のようだ
頭を撫でてくれるのは風ばかりで
それでも口笛を吹き放つ

ユニコーンが嘶いている
飛沫を上げて駆け出しそうで
つまりは口を塞ぐ
君の唇は柔らかい
愛されることを知ってしまっているからか
私達は宇宙の只中だと背中ばかりが泣いている
不時着した膝の温もりに
昼間の陽射しが隠れていたのは
僕ばかりの気のせいだろうか

ユニコーンが死んでしまった
その肉体は光の粒子になっていく
必死になって眼を閉じる
ものの
刺青のようになっては流れ落ちた
わたしの中の漆黒の夜空には
時々星が浮かんでは消えていく
朝が夜をほどいていくと
ユニコーンの背中に乗っていたはずの君が
小さな寝息を立てている

光をくべた窓枠にわたしの影が焼き付いたのか
蹄の音が鳴り響いていくと
その沈黙


君の呼吸

君の声を思い出そうとするも
ユニコーンの戦慄きが聴こえて来るかのようだ
耳を塞いでみる
お母さんが歌ってくれていた
子守唄が揺れている






自由詩 ユニコーン Copyright うめぜき 2011-03-30 00:20:48
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