明日への波紋
高梁サトル


鳥がなぜ飛べるか知らないように
花がなぜ咲けるか知らないように
人はなぜ生きるか知らないから歩いていける
手を繋いで不完全を積み上げ
明日へしかいけないいのちの行進

あやめる手はまもる為にも在るという事を
あなたは深く理解していて
理解しているからそんなにおろかに明確に
表現を違えることができるのだろう
数種類しかない表情が国境を越えるように
心臓から送り出される血はあかく
ながれるなみだに透ける世界
こんな夜にはどうしようもない愛ばかりが溢れて
止まない

 聴こえる
 歌未満の声が
 四季の美しい
 この孤島の
 明日という
 春で
 会いたいと

朝のしろの中で
不思議な予感とともに目覚めたきみは
羽化して飛び立つ鳥に似た蝶になる
黄金比ばかりでは説明できない世界で
美しいと感じるすべてが
展翅され針で貫かれたものであったとしても
それでも求める
悪趣味だと嫌うあの人の眼に触れないよう
机の引き出しの奥にしまったフリをして

ひらひらと彷徨う
蝶には空と海の境目がない
耐えうる気圧だけを頼りに
花の蜜でなく朝露を探す脆弱さでは何も掴めないと
羽のように思っていた渇いた手足の先に
小石が投げられる
それはすべてを飲み込む津波とは違って
やさしい
波紋


自由詩 明日への波紋 Copyright 高梁サトル 2011-03-14 07:35:52
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