シンクロニティ
高梁サトル

晴れやかな正午に
土砂降りの深夜に
ショーウィンドウ越しにわたしの海辺に寄って
砂浜で輝く貝殻を拾う
追い越して先回りする足取り
空瓶がひとつずつ埋まっていくたびに
はばたきの向こう側から手を振る
あなた

幸せそうに微笑んでいるゆめのあいまを
見詰めているうちに
無意識に呼びたくなる
名前も知らないというのに不思議ね

鉱石のようにかたく
音楽のようにあざやかな
唇の少しの隙間から零れるあぶくのような
呼吸を整える

揺れている水面が
つんざく雷鳴が
倍音に重なって
歌を忘れてしまったわたしでさえ
共鳴してうたえたような気になれる
前方に毅然として在るあなたの背中を確認しながら
音階を整えてゆく

何も間違ってはいない
わたしたちは善良と悪意のその境目で
絶えず揺れ惑う幻のようなもの
自分を護ることで精一杯の脆弱さを抱え
それでも誰かを慈しみたいと切望している

“うそ”なんて何処にもないのに
どうして探そうとするのか
どうして責めようとするのか
それが原罪であるなら
わたしたちは矛盾に苛まれほろびるべきなのか
生きる為の大義名分
間違ってはいない、のに
どうしてこんなにこころはいたい
すべてではないと理解していても

聞いて
聴いて
理由のない音楽
果てし無い音楽
わたしたちの音楽
差異だけに目を向けず
わたしの中にある
あなたの中にある
シンクロニティを探して


自由詩 シンクロニティ Copyright 高梁サトル 2011-03-07 20:19:49
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