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salco

 穴居のインテリア

文明化された原始人の為の
鋼鉄と石粉で出来た矩形巣箱の中で

居間は森林であれ

台所及び食堂は菜園であれ
或いはささやかな礼拝の山頂で

僅かな部屋部屋を繋ぐオタメゴカシの廊下は
しかし迷路であれ

故に玄関は異郷の国境であれ

子供部屋はジャングルであれ

そして寝室は宇宙の子宮であれ

けだし風呂は舟であれ

しかしトイレは画廊であれ

それから望み得るならば、
箱庭やベランダには故郷を少々




 眠り

朝靄に沈んだ街は白い湖底で
眠りつづける岩の群生
時の止まった深いしじま
息もせず
遠い水面の光もざわめきも届かない
ぷっつりと全てが切れた世界は
途絶の寂寥だけが支配する
この街はダムに沈んだ故郷
営みと約束に置き去られ
音も時も訪ね来ない
夢さえ見ずにただ眠り
眠りつづけ
この場所を覚ますものは無く
思い出にも上らぬ沈黙の最深部
柱や戸や天井は水中で
朽ちる事さえ忘れている
空はあんなに遠く軽く
この街は、まるで地上に無いかの如く
白い靄に沈んでいる
寝息さえ聞こえはしない
何もかも行ってしまった

ふるさとは
遠景の向こう岸
永眠の黒い汽車


自由詩 属性 Copyright salco 2011-02-27 19:42:42
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