雪夜の試み
salco

凍ったまま
凍ったままで
夏を待て
降りたシャッターの前に
右手をかざし
瞑目の、水晶の立像となって

冬はお前を追憶の塔にした
透明なお前の体を通して
青い青い海原が見える
光の波頭達がうっとりと
沖は眠たげに歌っている
お前の体の中に見える、
あれは夏だ
永遠の夏

雪が降る
雪が降る
お前は硬く硬く透き通って行く
かじかんだ命は眠りに落ちる
千年が瞼と眼球の間に流れ
やがて停滞し、満ちて凍る
動きは閉ざされ結晶化する
もはや何も動かない・・・

凍結の肉体は氷の像
厚く澄んだ防音ガラスと等しく
内なる世界空間を密閉し保護する
もはや通り抜けて行くものも
浸み出て流失するものも無い
いまや風景の一つと化したお前の
左胸にぽっかり見える世界
鮮やかな色彩に満ちた世界は
しかし躍動している
映像以上の経験として体感として
甦っている
海よりも思い出は青く
きらきらと世界を穿ち、輝き亘る
時こそは死んだ


自由詩 雪夜の試み Copyright salco 2011-02-15 22:09:35
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