知らないことが
吉岡孝次

道は細く分かれていって
ボンネットの先には 蒼い夕まぐれ
あなたがもう故郷にいないのは知ってる
私がもう独りではないのを
あなたが知っているように
どの角で曲がるのか ふいに聞かれた
反対に切れたら あの頃の二人の場所

  星と海だけが美しいこの町で
  私はあなたのものになりたくはなかった
  すべてが許されると思ってた
  あなたの痛みを知らない私の小さな夢は


波は白く砕けていって
ためらいながら海へと 風が滑り出す
一瞬でも横顔が似てるのは残酷
私がもう独りではないのを
あなたが責めているように
言葉でも身体でも 今も知りたい
さみしさを燃やした あの頃の二人のわけを

  星と海だけが美しいこの町で
  私はあなたのものになりたくはなかった
  かなわぬ明日はないと信じてた
  「昨日」の重さを知らない私の小さな夢は


私たちには知らないことが多すぎる
教えて かけがえのないひととの暮らしの中で
どうして今でもあなたを思い出す日があるの


  星と海だけが美しいこの町で
  私はあなたのものになりたくはなかった
  すべてが許されると思ってた
  あなたの痛みを知らない私の小さな夢は
 
  あの日のまぶしい夢は



自由詩 知らないことが Copyright 吉岡孝次 2011-02-03 20:23:57
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