ロイド・シティの冬、アイは
吉岡孝次

(1)
コートにくるまって 君と何を 見上げてるの
旧世紀の憧憬(ゆめ)飾っていた摩天楼に降る雪の中で
手に触れるカケラを 街は知らないふり だけど
灯りを消せないひとの計画(ゆめ)が 今夜は静かに胸を打つよ

 あゝ 君と探す一秒がきっと わたしを変えてゆく

真夜中に引き裂かれ 誰一人救えずに
生きてきたけど 迷わない もう君がいる
降り出した雪じゃなく 頬を切る風じゃなく
白い吐息の暖かさ 君に感じていたい 今夜

(2)
凍えた感覚は 時をかけて溶かしてゆく
落ち着き払った君の瞳 切なさを込めて見つめながら
譲れない明日を ひとはものに換えてくけど
いとしさを誘うこんな夜は 誰の手にもまだ落ちていない

 あゝ 君がいつか どこか遠くへと いくのが怖いけど

暗闇を欺いて 虚しさを乗り越えて
ここまできたよ 迷わずに 抱きしめていて
愚かさも激しさも もう届かない場所を
ここに見つけて さみしさを君に包んでほしい 今夜

真夜中に振り返る 一人きりのわたしを
君の鼓動が この胸に響く夜には
降りつづく雪に今 癒された悲しみを
やさしく強く 誰よりも君に包んでほしい 今夜


自由詩 ロイド・シティの冬、アイは Copyright 吉岡孝次 2011-01-30 20:45:21
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