とんぼ
itukamitaniji

とんぼ

誰にも見せない涙を 僕だけに見せてくれた
君を励ます言葉が 浮かばなくて僕も泣いた
不謹慎だけどその涙を 僕は美しいと思ったんだ
その泣き声が心地よくて とても温かかったんだ

どんなこと話したとか 君がどんな風に笑ったとか
時が経って 僕は忘れてしまっただろう
ただ思い出せるのは 血のように燃えるような赤
空を焼き尽くしていた赤色と そして君の涙だけ


突然の雨で逃げ込んだ 鉄塔の下に二人きり
うつむく君にかける言葉が 浮かばなくて僕も黙った
不謹慎だけど この雨が止まないように願ったんだ
世界が二人だけ残して 止まってしまえばいいのにって




そして世界は僕一人だけを残して
止まってしまった



どんなこと話したとか 君がどんな風に笑ったとか
時が経って 僕は忘れてしまっただろう
ただ思い出せるのは 血のように燃えるような赤
空を焼き尽くしていた赤色と そして君の匂いだけ

僕は歌うよ 君と居た記憶を
君が居た記憶を 君が居ないこの場所で

そして世界はものすごいスピードで
君を消すように廻り始める


自由詩 とんぼ Copyright itukamitaniji 2011-01-26 15:33:23
notebook Home 戻る  過去 未来