慌てているのさ
うめぜき



デパートの窓辺から幼な児達が歌っている
「あわてんぼうのサンタクロース〜、クリスマス前に〜」
僕も知っているから
この歌は何十年前から歌われている

コンビニエンスストアの店員が
サンタの帽子を被っている
帽子が邪魔そうだ
あるいは被っていることを忘れているのかもしれない
汗をかいている

夕方、茜が射す空
バス停に並ぶ主婦の手にはプレゼント
まだクリスマスじゃないから
それは違うのかもしれないけれど

ケータイの売り子がボリューム満点のクリスマスBGMに
負けないように声を張り上げている
手にはティッシュを持ったサンタのコスプレガールが
真顔で人の流れに合わせて身体の向きを変えている

街を往く恋人達を盗み見ると
皆、笑顔だ
楽しい時間は今も創られていく
飾り付けられた都会も悪くない
まだクリスマス前にもかかわらず
ちょっとあわてているのか
あるいはあわてんぼう達ばかりが集まっているのか
見上げたビルディングには蒼いイルミネーションが
まるで誰かがそこを通るのを待っている
それはまるで夜空に掛かる道のようだった












自由詩 慌てているのさ Copyright うめぜき 2010-12-13 01:51:15
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