うめぜき



ジュースにぷかぷかと浮かんでいる「ド」は
「レ」やら「ミ」やらを探している風なので
飲み込んでドレミと呟いてみたものの
どうもそんじょそこらのドレミになってしまう
それを物書きの哀しい習性で怒霊深と当て字にしてみるものの
さきほどの「ド」のなんとも言えぬたたずまいは生まれない
芸術家ぶって光の当て方やらあるいは黒の使い方を工夫して
ドを飾り立ててみるものの
先ほどの「ド」の孤独は生まれない
やがて他の音楽同様
完全なハーモニーを求めていくであろう「ド」
「ド」として生まれ、やがて沈黙に消えていく「ド」
その「ド」の未完成さと「ド」の自立した様子はまして見当たらない
窓の外に霞む星空に「ド」と白く切れ込みを入れて
それこそ「ド」が永遠に結び付けられますようにと祈るのだが
「ド」にはすぐにぼんやりとした霞がかかり
その形は結べなくなってしまう
あなたがこの星空を見ているのなら
「ド」を届けることで私の思いに気づかせたいのだが
飲み残したジュースの上には何も揺れておらず
もう何処にも先ほどの「ド」は



  無い






自由詩Copyright うめぜき 2010-12-08 04:01:43
notebook Home 戻る  過去 未来