プレゼントは遠慮するから幽体離脱したい
あおば

              101114




今ではかなり以前のことになりましたが
或る詩のイベントに参加いたしました
そこでの雑談の折りに驚いたことに
参加者の殆どが
幽体離脱の経験者で
幽体離脱ってなんだろうと考えたのは私くらいだろうと
少し寂しく感じたことがありました
詩には幽体離脱の経験がないと理解不能のこともあるようで
今回のタイトルには些かの屈折した感情が湧いてまいりました
いつでもどこでも幽体となり身体から自由に離れることが詩を書いたり
理解するには必要なのですと言われたような気もして
疎外感を覚えたのは確かです
大真面目な顔をして
幽体なんてあるのかと疑問を呈しても
幽体離脱経験者には通じない
有るものを無いと言われたらそりゃ怒るよ
無いものが有ると言われたときにはあなた頭確かかと
相手の能力や素質を疑うが
有るものがないと言われたらそれは差別意識だ
虐めだ虐待だ
人間性を否定するろくでなしだと非難される
幽体ねと言いながら朝早くから
髪もおどろなお菊さんが失したお皿の数を確認する
お皿を数えるのに夢中でお日さまが出ていても気にしない
幽霊になってもお皿の行方が気になるのか
生まれつきの生真面目な性分なのか分からない
自分が子供の頃
目を瞑らされ
井戸の周りでお茶碗割ったの誰と言われて
名前を言わないと鬼にされるのが嫌でならなかったが
お菊さんも気が弱いのか
今日も朝から井戸の傍でお皿を数えているから
邪魔しないように
こんにちはと挨拶してから
桶に水を汲む
朝昼晩にと
天秤棒で母屋まで運ぶのが痩せた身体には辛いが
器量好しのお菊さんがじっと見守ってくれるから
辛い顔をするわけにもいかない
この程度は朝飯前と
少し戯けて片足を斜め前に持ち上げて
とっとっとと足早に立ち去るのだ
幽体離脱できないくせに本物の幽霊の前では少しも気にならないのが
考えてみれば不思議なことだ





「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作を修正。
タイトルは、こさん。







自由詩 プレゼントは遠慮するから幽体離脱したい Copyright あおば 2010-11-15 20:29:19
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