みかん
あおば

            101111


蜜柑の皮を剥く
指先に鈍色が
剥かれる悲しさを
染め付け
証拠を揃え
もはや逃れようもない
皮を剥き終わると
赤子の房が跳びだして
早く早くと泣きわめく
お皿の飢えに曝すか
お皿の上で渇かすか
締めて絞っていっそのこと
甘皮ごと粉砕するのも良いねと
ミキサーが囁いて
今朝もテーブルは落ち着かないが
散らかした蜜柑色は
口惜しいとも言わないで
食欲を落ち着かせ
さようならも言わないで
どこかに消える
葉付きの蜜柑だと
もう少し修羅場を見せてくれるのだと
芝居好きの父が蘊蓄を傾けて
指先が忘れる隙に
カバンを小脇に立ち上がり
もはやだれも抑えようがない






「poenique」の「即興ゴルコンダ」投稿作。
タイトルは、クローバーさん。



自由詩 みかん Copyright あおば 2010-11-11 12:05:56
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