メザシ
ナカツカユウリ

父のためにメザシを焼いている。
メザシから出てくる
もうもうとした煙

父のためにメザシを焼くなんて
つい最近までは
思いもしなかったなあ
留守中の父が戻ってくるまでに
焼いておいて差し上げる

私のお腹を覗くと
私の胃の辺りから
それこそ
もうもう
と煙を出すので
モーツアルトをかけた
馬鹿になるのだ

馬鹿になったところで
メザシはよい匂いを放ち
よい焼き色を見せた

テーブルに運ぶと、
朝ごはんのパン屑がそのまま
ふきんで拭く
静かな昼時
私が知らなかった静かな昼
飛行機の音だけが現在を響かせ、

遠くで私の泣き声が聞こえる





自由詩 メザシ Copyright ナカツカユウリ 2010-10-27 11:56:38
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