永久の春の国 / 霊魂
salco

 永久とこしえの春の国       霊魂

永久の国が空にある    森をさ迷う恋人よ
雲雀の嬉しげな    安らう時を知らぬのか
姿無い囀りの遥かな高みに    湖水に休む月影を
永久のうららの春があり    不意のお歌でお前は散らす
仰向いた男が見つめている    か黒く夜にうなだれた野の花を
眉根を解いて微笑いつつ    真白の裳裾で揺り起こす
楽シカラズヤ?
ああ、欠伸交じりの    森をさ迷う恋人よ
風はそよそよと    墓所にもお前は縁が無い
草はさわさわと    凍った石の回廊を裸足で滑り
         まだ温い血まみれ王子の亡骸に
お前は生まれた時から    いたずら娘の唇寄せて一心に
目を開けていたので    一体何を囁いていた?
何てこの子はまあ、
賢い子になることだよ、と    それからお前はまた笑い出し
それからお前は    お外へ遊びに出てしまった
やっぱり賢い子で    王子も二度とお前に会えまい
その目で何でも見つけ    遠い遠い、行くべき所へ行ったのだ
してやったりと    それもお前は知らぬこと
何でも捕えて来たものだ    小鳥の骸にそっくりな
         心を離れた魂は
何を見て来た    愁いを知らぬ頃のまま
そして何を知った?    花環でおつむを飾る身支度に
言うてごらん頭痛持ち    野原へ行ってしまったのだから
間抜け親父と淫婦の後嗣
城盗られ、国を盗られて傀儡くぐつ師に    それから暗い暗い森を抜け
白い母まで寝取られて    眼窩虚ろの使者どもがそちこちで
お前はそれで何負うた?    じっと窺っていたにも拘わらず 
怨嗟血みちのきちがい道化    目を輝かせ頬染めて
         妖精ニンフたちと戯れながら、花婿の待つ
じっと見ている    水辺へ走って行ったろう?
それは永久の春の国    それなのに何故、それも忘れて
薄碧の瞳に降り    眠れる者らを揺すぶり起こし
積もる塵を気にもせず    今宵も死を騒がせるのだ?


自由詩 永久の春の国 / 霊魂 Copyright salco 2010-10-07 21:45:00
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