仙石原にて
西日 茜

ススキの穂の群れの中でキスをしました
高く澄んだ青い空が見えました
ここは心の中にしまっておくための
誰にも邪魔されない場所だから
あなたとわたしは幸せでした
サワサワと穂が揺れて包むものだから
抱き合って髪をなでました
悲しむことはありません
あなたはとても良い子ですから
わたしがなでてあげましょう
青い青い空と青い青い臭いと

ススキは穂を伸ばし
わたしたちに絡みつきました
金色の波はゆらゆらと
風の来るほうからゆっくりと流れ
湖の方へと下降して行きました
流されているようでした
絡みついた穂にすっかり包まれて
シューゲイザーのような
黄昏がそっと近づいて来るころには
互いの手を取って
とても軽い気持ちになって

生きているのか死んでいるのか
夢のような曖昧な世界に居りました
現実は遠ざかり
君の美しい小麦色に光る肌が
よけいに夕日を招いてしまうのでした
たくさんの熱を帯び
もつれたわたしのつま先を
金色の波がすくってしまうから

怖くなって走り出し
君が見えなくなるように
泣きながら走り出しました
君はびっくりして
追いかけて
わたしをつかまえて
わたしをすぐにつかまえてしまうのでした
さっきより強く
とても強く抱き合って
金色の波の中で
二人は泣きながら愛し合いました

こんなふしだらなわたしたちを
神様は罰しておしまいになるでしょうね





自由詩 仙石原にて Copyright 西日 茜 2010-09-19 00:04:01
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