Ground Zero
寒雪



いつも同じ場所を捲るので
擦り切れてぼけてしまったアルバムを
暇さえあれば眺めてる
夏に妻と子供の三人で出かけた海水浴の
真夏の太陽に負けないほどまぶしい
みんなの笑顔
桜が舞い散る下
緊張した面持ちで写真に収まった
息子の入学式
真新しいランドセルが似合わなくて
みんなで笑いあったことが昨日のよう


ページを捲れば
次々とぼくの脳裏に現れては消える
モノクロームな思い出
日常がこんなにも鮮やかに色付いていることに
ぼくに気付かせてくれたのは
アルバムの隅から隅まで
たくさんの風景を見せてくれた妻と息子


このアルバムを眺めるぼくの側に
きみたちがいてくれれば
もっと思い出はきれいに輝いてくれたはずなのに


ぼくの耳には
あの日の地響きが
ぼくの目には
あの日の閃光が
振り払おうにも消えてくれない
巻き込まれるのはいつでも弱者


憎みたくても
相手が大きすぎて
ぼくは誰を憎んだらいいんだろう


自由詩 Ground Zero Copyright 寒雪 2010-08-09 07:26:53
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