ブラック・コンディション
乾 加津也

わたしの黒が
ひかりを拒んですすみつづけた
広大なじゆうで感じた
はじめての深海のおもみに
いまにも息をつぶされそうな魚みたいに
いのちの淵からあえぐ自分がよぎった

黒いへやでわたしは眠る
たくさんの手とそれを作る手とそしてその腕と
会話したところで底なしの床がひらく
(もどるしくみはりかいできない)

珈琲の漆黒はわたしにしみこんだあと
とうめいな黄色い成分となって出ていくまでのあいだ
そとに向かってひらかれる瞳孔に集結して
たゆみない偏光処理と脳内イメージに励む

黒がすべてのひかりを吸収するというなら
ひかりと色を自在に操る皇位のたちば
昔からひかりのつかいと交戦する黒幕

みえないものの神聖さをかいくぐって
闇のイデオロギーをもたらす細長いものたちが
ゆるゆるとあたためている卵をしめつけ
斑の黒がかさぶたをはがす

からすは飛ぶのではなく覆う
その先端から内側にひろげた両翼のなかに入れて
黒い同盟をうながす



(それでもわたしはもどってきた)
ことばが黒いのは用紙が白いから?
ちがう
その無垢をはずかしめることで
怜悧な屋敷に仲間をいざなえるのだと
しらされた

塗りつぶすことはゆるされない
すこしずつなぶって
あやしながらほうりこむのだ


自由詩 ブラック・コンディション Copyright 乾 加津也 2010-08-04 15:12:22
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