十月
本木はじめ

そして廃墟のような季節がぼくを微熱を帯びたむらさきにするのです

どこまでもすすきがひろがる枯れ野のなかで
あなたが動こうとしないので
ぼくは仕方なくすべての扉に鍵をかける
すべての窓に杭を打ち
壁とゆう壁を黒く塗り潰してゆく
あなたを閉じ込めるように
さまざまな信号を遮断する
そして廃墟のような季節がぼくを微熱を帯びたむらさきにするのです
ぼくらふたりきりで
視線のない贅沢な時間を過食する
口は開けたまま遠い物語を思い描きながら放心
「ここは季節の墓場です」
あなたが呟けば明らかにぼくら季節に埋もれた死体だろう
つながらない雲が空を覆うように流れても
いつのまにかひらがなのようにねむってるあなた
そして廃墟のような季節がぼくを微熱を帯びたむらさきにするのです
いつまでも通じ合うことのできないぼくらとゆう季節の日没
ねむるあなたを抱きかかえあるきだす
枯れた思い出のようなすすきの群れを
かき分けてかき分けて
さらに深く老いたすすきの群れの中へと
踏み入ってゆく
まるではじめから世界がここだけであったかのように


自由詩 十月 Copyright 本木はじめ 2004-10-14 05:15:04
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