越えられぬ丘
テシノ

ここから見えるのは緩やかな勾配と
奥行きのある青い空
越えられぬ丘と誰かが呼んだ
そういうものがあるのだと
そういうこともあるのだと

例えばパレードを追い掛けていく子供が
その浅いふもとで足を止めて聞いている
丘の向こうへ消えるジンタの音色
幼いなりの器量で理解した
自分の帰るべき場所というもの

例えばむかし少年が友から聞いた
その言葉の中に見つけた小さな偉大さ
嫉妬にも似た尊敬を抱きつつ
成長した今も眩しげに見上げる
丘の上で彼方をみはるかす友の姿を

叶わぬ憧れとも
単なる諦めとも違う
頂きまでの距離はたやすく
しかし
踏み入れる足が畏れるような
美しくそびえ立つあなたの越えられぬ丘
そういうものがあるのだと
そういうこともあるのだと


自由詩 越えられぬ丘 Copyright テシノ 2010-06-15 10:24:17
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