黄色い日
salco

起きると窓が黄色い。雪になるか、黄砂なのか。春が近い。こんな日には自分を埋めてしまいたい。写真の中に戻りたい。

暗い台所。ブラインドの埃。空っぽの鍋、白い皿。ひび割れた唇を触れてみる。血と牛乳。耳の奥から聞こえる知らぬ女の声。

髪を梳く。ブラシと毛髪が擦れ合う音で長さを測る。長い毛は何本も抜け落ちる。私は喋らない。もう何年も。これからも。

公園にブランコが無い。子供達も消えた。子供時代が撤去されたのだ。危険な欲望だけが徘徊している。所有と破壊の。

シーツの上では男と女。終日性交を繰り返す。しみだらけの背中をたるんだ腿がはさんでいる。病んだ喘ぎ、天国の直径。

私達はくっついてしまう。互いの体の重さに沈んでしまう。けれどあなたは私を知らない。何一つ。知ったところで意味は無い。

死んだ魚の目。乾いた道。尖塔と橋。19世紀。馬車と黒衣の老婆。キャベツの葉を青虫がかじる音。精液と剃刀。密告。

枝。空。指。お母さん、雪が降って来ましたよ。桜が盛んに散っています。私を抱いて下さい。しっかりと抱いて下さい。
                                
                          2003/03


自由詩 黄色い日 Copyright salco 2010-04-18 23:31:34
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